医師という職業

医師とはどんな職業なのでしょうか。それは言うまでなく病人や患者の治療にあたる職業です。これでは簡単すぎるので、もう少し専門的に、「それらしく」書くとすれば、医師とは医療および保健指導を携わる医療従事者とでも言うことができるでしょう。医学という医療に関する専門の学問・学識に基いて傷病を予防したり、診療したり、或いは公衆衛生を普及させることをその責務としています。医師と言えば、私達の社会生活には欠かせない存在です。私達は普通、私達のような医療に対する素人だけでは対処できないような病気になった場合、医師に頼って医師の診察、指示を受けることで病気を治します。私達が今日心身ともに健康な状態で生活ができるのは、多分に医師、或いは看護婦や看護士といった医療関係者の尽力に寄るところが大きいでしょう。いろいろな意味で、医師や看護婦といったそうした医療関係者は私達にとって非常に馴染み深い存在です。
ところでその私達の医師に対する馴染み深さを反映してか、今日の日本では、私達は一般に医師に対して「お医者さん」と呼ぶことが多くなってます。これには勿論医師に対する親しみの他に医師への尊敬が含まれていると言えます。また医師に対する呼称としては「お医者さん」以外に、「医者」「ドクター」或いは「先生」といった呼称が使われます。ですが意外なことに「医師」という名称が正式に確立されて、そして一般に使われるようになるのは随分後のことで、明治以後のことだそうです。
ところで皆さんもご存知の通り医師は国家資格です。医師になるためには毎年行われる医師国家試験に合格することが条件となります。医師国家試験に合格すると、合格者は医籍登録と呼ばれる登録を行うことになります。この登録を完了した人に対して厚生労働大臣から免許が与えられます。この免許こそが私達が一般に言う「医師免許」です。これを与えられた人だけが医師を名乗って、医師としての仕事ができるようになるわけです。ですが医師は医師国家試験に合格した後も、さらにやらなければならないことがあります。それが所謂医療研修です。1999年に改正された医師法第16条の2には医師の研修についてこのように規定されています。
「診療に従事しようとする医師は、2年以上、医学を履修する課程を置く大学に附属する病院又は厚生労働大臣の指定する病院において、臨床研修を受けなければならない。」
またこれ以外にも、さらに2004年度からは、臨床医として勤務するためには2年間以上の臨床研修を行うことが努力義務とされました。これは医療の世界に明るくない私達にとっては少々わかりにくいのですが、つまりここで規定された臨床研修を終えていない医師は、医業を続けることはできるものの、病院や診療所の長となることができないということを意味します。この間の状態にある医師、つまり臨床研修を終えていない、いわば医師の卵のような存在の医師を一般に通称名として研修医とも呼んだりしているようです。

ところで医師と言っても、私達が一般にイメージするような、病院で患者の治療にあたるような医師たちが医師の全てではありません。同じ医師でも病院では勤務しない医師もいます。そういうとなんだか奇妙に聞こえるかもしれませんが、例えば基礎研究医や産業医と言った人達です。こうした職業を皆さんは耳にしたことがあるのではないでしょうか。それだけではありません。社会医学者、法医学者等も医師に含まれます。特に後者はよく事件の捜査等に登場することがあり、皆さんも恐らくその存在については知っていることでしょう。こうした職業もある意味医師に含まれます。こうした職業は一般の臨床医とは異なり2年間以上の臨床研修を行うといった義務はありません。とはいえこれらの分野においても、認定医取得条件や或いは求人の際に2年間の臨床研修を義務づけている場合もあります。